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神戸地方裁判所 平成8年(ワ)2105号 判決 1997年5月27日

原告

小川裕香

ほか一名

被告

堀井光敏

主文

一  被告は、原告小川裕香に対し、金五七万一一五二円及びうち金五〇万一一五二円に対する平成八年七月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告姥英樹に対し、金一〇八万九七二二円及びうち金九八万九七二二円に対する平成八年七月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用はこれを五分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

五  この判決は、第一、第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告小川裕香に対し、金一〇二万七〇〇〇円及びうち金九二万七〇〇〇円に対する平成八年七月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告は、原告姥英樹に対し、金二〇九万七一五三円及びうち金一八九万七一五三円に対する平成八年七月四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、後記交通事故(以下「本件事故」という。)により傷害を負つた原告小川裕香(以下「原告小川」という。)が、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条、民法七〇九条に基づき損害賠償を求め、本件事故により物損を被つた原告姥英樹(以下「原告姥」という。)が、被告に対し、民法七〇九条に基づき損害賠償を求める事案である。

なお、付帯請求は、弁護士費用を除く内金に対する本件事故の発生した日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。

二  争いのない事実

1  交通事故の発生

(一) 発生日時 平成八年七月四日午後九時二〇分ころ

(二) 発生場所 神戸市東灘区深江北町一丁目一二番二五号先信号機による交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 争いのない範囲の事故態様

原告姥は、普通乗用自動車(神戸三四に三二二六。以下「原告車両」という。)を運転し、本件交差点を西から東へ直進しようとしていた。

他方、被告は、普通貨物自動車(神戸四一の五五六五。以下「被告車両」という。)を運転し、本件交差点を南から北へ直進しようとしていた。

そして、本件交差点内で、原告車両の右側面前部と被告車両の前面中央部とが衝突し、その衝撃で、原告車両は左前方に押し出され、その左前部が本件交差点の北東角にあつた鉄柱に衝突した。

なお、原告小川は、原告車両の同乗者である。

2  責任原因

被告は、被告車両の運行供用者であるから、自動車損害賠償保障法三条により、本件事故により原告小川に生じた損害を賠償する責任がある。

また、被告は、本件事故に関し、一時停止義務違反の過失があるから、民法七〇九条により、本件事故により原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

三  争点

本件の主要な争点は次のとおりである。

1  過失相殺の要否、程度

2  原告らに生じた損害額

四  証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

五  本件の口頭弁論の終結の日は平成九年五月六日である。

第三争点に対する判断

一  争点1(過失相殺)

1  原告姥及び被告の各本人尋問の結果によると、本件事故の態様に関し、前記争いのない事実の他に、次の事実を認めることができる。

(一) 本件交差点を構成する東西道路は、片側一車線、両側合計二車線の道路であり、これと別に、段差のある歩道がある。

また、本件交差点を構成する南北道路は、中央線はなく、対面通行ができる道路で、本件交差点の手前には一時停止の標識がある。

(二) 本件交差点は、夜間でも街灯などのため明るい。

ただし、本件交差点の南西角には高い塀がめぐらされており、原告車両の走行してきた本件交差点の西側と被告車両の走行してきた本件交差点の南側とは、相互の見通しが悪い。

(三) 被告車両は、本件交差点に進入するに際し、わずかに減速したものの一時停止はしなかつた。

また、被告は、衝突するまで、原告車両の存在にはまつたく気づいていない。

(四) 原告車両は、本件事故の直前、時速約四〇キロメートルで走行しており、原告姥は、本件交差点の手前で、本件交差点に進入してこようとする被告車両を認め、直ちに自車に急制動・左転把の措置を講じたが及ばず、原告車両と被告車両とが衝突した。

2  右認定の事故態様によると、被告に一時停止義務違反の過失があることは明らかである(当事者間に争いがない。)。

他方、車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない(道路交通法三六条四項)のであるから、原告姥も、南側の見通しが悪いという前記認定の交差点の状況においては、より自車の速度を減じて走行すべきであつた。したがつて、同原告も、本件事故に対する過失を免れることはできない。

そして、右認定の事故態様によると、本件事故に対する過失の割合を、原告姥が二割、被告が八割とするのが相当である。

二  争点2(原告らに生じた損害額)

1  原告小川

原告小川は、自己に生じた損害額に関し、別表1の請求欄記載のとおり主張する。

これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容欄記載の金額を、同原告の損害として認める。

(一) 損害

(1) 通院交通費

甲第二号証の二の一及び二、原告小川の本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、原告小川は、本件事故直後、救急車で医療法人愛和会金沢病院(以下「金沢病院」という。)に搬送されたこと、本件事故が発生した日の翌日である平成八年七月五日にも同病院に通院したこと、同月八日から同年九月二七日まで安東整形外科に通院したこと(実通院日数四八日)、金沢病院への通院は、原告姥の送り迎えによつたため、原告小川は通院交通費を要しなかつたこと、安東整形外科への通院交通費は片道金一四〇円であつたことが認められる。

したがつて、通院交通費は、安東整形外科への分のみを認めれば足り、次の計算式により、金一万三四四〇円となる。

計算式 140×2×48=13,440

(2) 文書料

甲第二号証の三の一ないし三によると、文書料金一万三〇〇〇円を認めることができる。

(3) 慰藉料

甲第二号証の一の一ないし三、第二号証の二の一及び二、原告小川の本人尋問の結果によると、原告小川は、本件事故により、頸椎捻挫の傷害を負い、当初、頸部痛、左上肢知覚障害、頭痛、頸部可動域制限等の症状があつたこと、このうち、頸部痛については通院期間中続いたこと、安東整形外科における治療は、内服・理学療法が中心であつたこと、同原告は、宝石販売の仕事に従事していること、本件事故後約一〇日間は、右傷害のため、休業を余儀なくされたこと、その後も、通院のため就労時間が減少し、給与を減額されたことが認められる。

そして、右認定事実と、前記の本件事故の態様、同原告の通院期間、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、本件事故により同原告に生じた精神的損害を慰謝するには、金六〇万円をもつてするのが相当である。

(4) 小計

(1)ないし(3)の合計は、金六二万六四四〇円である。

(二) 過失相殺

争点1に対する判断で判示したとおり、本件事故に対する原告姥の過失の割合を二割とするのが相当である。

そして、原告姥及び原告小川の各本人尋問の結果によると、本件事故は、原告姥が、原告小川を、同原告の勤務先から自宅まで送る途中で生じたことが認められ、これによると、原告小川と被告との関係においては、原告姥の過失を、いわゆる被害者側の過失として、過失相殺の対象とするのが相当である。

したがつて、右過失相殺後の原告小川の損害は、次の計算式により、金五〇万一一五二円となる。

計算式 626,440×(1-0.2)=501,152

(三) 弁護士費用

原告小川が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を金七万円とするのが相当である。

2  原告姥

原告姥は、自己に生じた損害額に関し、別表2の請求欄記載のとおり主張する。

これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容欄記載の金額を、同原告の損害として認める。

(一) 損害

(1) 修理費

甲第三号証、原告姥の本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、原告車両は原告姥が所有するものであること、本件事故により、原告車両には、金一二一万一四〇三円を要する修理が必要となつたことが認められ、右修理費は、本件事故による原告姥の損害というべきである。

(2) 代車料

原告姥は一日金一万円の割合による三〇日分のレンタカー代を請求する。

しかし、原告姥の本人尋問の結果によると、同原告は、レンタカーを実際に利用したわけではなく、本件事故後、勤務先の車両を使用することができたことが認められる。

したがつて、原告姥の請求するレンタカー代は、実際に同原告に生じた損害ではないから、これを認めることはできない。

(3) 評価損

原告姥の本人尋問の結果の中には、原告車両はシヤーシがゆがんでしまい、修理をして直しても、長年乗つているとまたシヤーシのゆがみが出てくると言われたため、修理をせずに廃車にした旨の部分、及びシヤーシが曲がつていたため、下取り価格について評価落ちがあつた旨の部分がある。

しかし、甲第三号証により認められる原告車両の要修理部分をつぶさに検討しても、シヤーシのゆがみを直ちに認めることはできない。

なお、評価損は、修理してもなお価格の減少がある場合に認められうるところ、これは、単に当該車両に事故歴があるというだけでは足らず、修理技術上の限界から、当該車両の性能、外観等が、事故前よりも現実に低下したこと、または、経年的に低下する蓋然性の高いことが立証されてはじめて、これを認めるのが相当であると解されるところ、前認定のとおり、原告車両は実際には修理されておらず、本件においては、右評価損の存在を認めるに足りる証拠はない。

(4) レツカー代

甲第四号証によると、レツカー代金二万五七五〇円を認めることができる。

(5) 小計

(1) ないし(4)の合計は、金一二三万七一五三円である。

(二) 過失相殺

争点1に対する判断で判示したとおり、本件事故に対する原告姥の過失の割合を二割とするのが相当であるから、過失相殺として、同原告の損害から右割合を控除する。

したがつて、右控除後の金額は、次の計算式により、金九八万九七二二円(円未満切捨て)となる。

計算式 1,237,153×(1-0.2)=989,722

(三) 弁護士費用

原告姥が本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右認容額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用を金一〇万円とするのが相当である。

第四結論

よつて、原告らの請求は、主文第一、第二項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し(付帯請求は原告らの主張による。)、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 永吉孝夫)

別表1 (原告小川)

別表2 (原告姥)

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